浮遊する人生
思えば私は「今」を生きたことがほとんどありません。
特に学校に通っている時は、いつも早く卒業したいとばかり思っていました。
卒業するまでの日数や年数を指折り数えていました。小学生の時からずっと。
いつも居心地が悪くて、生きづらくて、早く抜け出すこと、逃げ出すことばかり考えていました。
大学からは実家を出て、それから実家にあまり寄り付くこともなくなりました。
私は実家からも逃げ出したかったのです。
実家にいると本当の自分を出せないような、自分が抑えられているような、なんとも居心地悪いような気分がずっとしていました。
社会人になって、学校生活よりはだいぶ生きるのが楽になりましたが、やはり仕事に慣れてしばらく経つと、ここから逃げ出したくて、うずうずしているのは相変わらずでした。
そしてたまたま転勤族の夫と結婚することになり、全国を渡り歩く人生が始まりました。
私の友達はすでにみんな出産して、自分の地元や、配偶者の地元などにマイホームを構えてしっかりと地域に根付いて生活している子がほとんどです。
それに比べて私は浮き草のような、いつもどこかを転々としている人生ですが、これがどうも私には合っているようです。
今の土地に来る前、夫が転勤になる前は働いていたのですが、その職場の人たちは私には合わない人たちでした。
誰が悪いとかではなく、価値観が合わないのです。
といっても、私は表面上、当たり障りなく人に合わせて、にこやかに波風立てずに人と上手くやるのは得意な方なので、側から見ると結構仲良く、和やかにやっているように見えていたと思います。
だけど私の心はストレスが溜まっていて、いつも胃痛がして、ずっと胃薬を飲んでいる生活でした。
そんな時、夫の転勤が決まり、私は変な嘘をつくことなく、堂々と円満退職をすることができました。
こう言う時に、転勤族で良かったとつくづく思います。
手相って結構、信憑性があると私は思っているのですけど、私の生命線(一般的によく寿命の長さなどを見る線です)は親指と人差し指の間から始まって、小指側の方に線が両手とも流れています。
大抵の人はカーブを描きながら、親指側に線が流れていることが多いと思うのですが、私のように小指側に線が流れているのは、故郷を遠く離れる相なのだそうです。
私は自己否定の感情をずっと持っていたのですが、親元を離れてから、その感情が少しずつ改善してきたように思います。
ずっと自己否定の感情は私から湧き出るものだと思っていたのですが、よく考え
ると、この感情は私の母から受け継いできた感情なのではないかと気づいたのです。
母も私と同じように自己否定の感情に囚われている人です。
自己否定は世代間で連鎖するといいますが、まさに私たち親子がそうだったと気づいたのです。
しかし、物理的に離れることでその自分責めの思想の影響が少しずつ和らいできた気がします。
だから私にとって、故郷を離れること、この浮遊人生はベストな選択だったような気がするのです。